バリウムゼリー作れますか?
わたしの病院では年間10件程度(少ない!)の嚥下造影検査(以下VF)をしています。
現在働いている職場に来るまではバリウムゼリーなんて作ったことがありませんでした。
既存のレシピでは、水とバリウムが分離して2層になり検査食としては危ないゼリーでした。
「バリウムゼリーの作り方」、「バリウムゼリー レシピ」など検索してもなかなか答えが見つからず、自分で試作して言語聴覚士(以下:ST)と一緒に試食をして作成に成功したのでその作り方を公開いたします。
一人栄養士が多く私と同じように悩んでいる人がきっといる。
そんな栄養士さん達に役立ててもらえたらと思ってます。
バリウムゼリーを使う検査VFとは
嚥下造影検査とは・・・
嚥下造影検査は,造影剤または造影剤を含む食物を嚥下させて,造影剤の動きや嚥下関連器官の状態と運動をX線透視下に観察する嚥下機能検査である。嚥下の口腔期,咽頭期,食道期のすべてについて,嚥下障害の病態を詳細に評価することができる。
以下省略。
※Minds ガイドラインライブラリより
つづきは参照HPでみれます。⇒ コチラ
わたしの病院は回復期リハビリテーション病棟があり、主にその病棟の患者さんにVFを実施します。
VFでの栄養士の役割は、バリウムを使って検査食を作ることです。
大学卒業後もちは精神科病院5年、保育園2年半働き、現在の病院で働いています。
なので、VFってなに?
検査食どうやって作るの?
こんな状態でした。
わたしの病院で栄養士はもちだけなので相談相手はもちろんいません。
前任者から仕事の引継ぎ期間も3日間。
その間にもちろんVFはありませんでした。
バリウムゼリーを初めて手作り
初めて依頼が来た日は、とりあえず既存のレシピを元にバリウムゼリー作りましたが、ひどい出来栄え!
これ・・・検査食にならんじゃん!
無知な私でもおかしいのは歴然。
それもそのはず、バリウムが沈殿して水とバリウムがきれいに2層になったゼリーが完成。
今までこのゼリーで検査してきたのか?
これじゃ検査にならないでしょ!
それからはネット検索をしてバリウムゼリーの作り方を調べました。
でもバリウムゼリーの情報は意外と少なく自分で施行錯誤するしかありませんでした。
幸いSTが、当時は4人いてみんなで相談しながら進められたので大変助かりました。
こういうときに相談できる相手がいるのは大変ありがたかったです。
試行錯誤の末、バリウムゼリー完成
上記の画像のゼリーが完成品です。
これを作るまで何度も試作を繰り返し、2層にならずに作れるようになりました。
ゆらすとプルンプルンします。
口腔内にいれて咀嚼してもバラけません。
バリウムが入っているので粉っぽさは少し残ります。
レシピです。↓
【材料】
- バリウム(当院は、バリトゲンHDを使用)・・・30g
- 水・・・100ml
- 砂糖・・・10g
- ゼリーパーフェクト(日清オイリオ)・・・1.1g(全体の0.8%)
ゲル化剤を1.0%にすると形状がもう少ししっかりしたゼリーに仕上がります。
当院ではSTの意見で、0.8%のバリウムゼリーが採用されました。
日清のゼリーパーフェクトです↓
- 片手鍋にバリウム、水、砂糖を入れてよく混ぜる。
- ①を火にかけて沸騰したらゼリーパーフェクトを入れてよく混ぜる。
- 混ざったら鍋が入るくらいのバッドに水を入れてその中に鍋を入れて混ぜながら冷まします。少しトロッと固まり始めたら型に流し入れて荒熱が取れたら冷蔵庫で冷やします。
- 完成。
※混ぜ続けるのがポイントです。混ぜることで2層にならずに済みます。
バリウムゼリー以外の検査食ラインナップ
今まではバリウムゼリーの依頼だけでした。
STからの依頼を受け、ゼリー以外の検査食も実現するべく再度試行錯誤を繰り返しました。
- バリウムゼリー
- バリウム入り全粥
- バリウム入り軟飯
- バリウム入り蒸しパン
- 各食形態の主菜、副菜(バリウム入りのあんかけをかける)
- バリウム水(薄いとろみ、中間のとろみ、濃いとろみ、とろみなし)
検査食依頼票も作成して、何が必要かレ点チェックして提出できるようにしました。
バリウムの量は少なすぎると、X線照射すると薄く映り食塊の存在が見えづらいです。
適したバリウム濃度は、全体量の約30%のバリウムを入れると濃く映ります。
当院のレシピのバリウムゼリーのバリウム濃度は27%でしっかり映ります。
バリウムゼリーの失敗談と成功談
ある患者さんに「麺」を試したいとSTより依頼を受けたことがありました。
強力粉にバリウムを混ぜ、こねて、切って、茹でてという工程を何度も繰り返しましたが、成功できませんでした。
これは今後の課題ですが、今のところ需要がないので保留状態です。笑
このとき、同時に蒸しパンの依頼が来て、蒸しパンは食感も見た目もきれいに仕上がりました。
- 強力粉・・・100g
- 塩・・・6g
- 湯・・・60ml
- バリウム・・・100g(あ、30%じゃない 笑)
※このレシピじゃ成功しません!参考程度にと思い一応掲載しました!
【材料】
- ホットケーキミックス・・・50g
- バリウム・・・60g(あ、また30%じゃない。笑)
- 水・・・30ml
- 油・・・大さじ1
※ココア味を作るならココアをティースプーン2杯弱!
いたって単純です。
材料を全て混ぜて、アルミカップ(型はなんでもいいです)に流しいれ、蒸し器で20分ほど蒸します。
いつもVF実施の30分前に蒸し始めると開始時にはまだ温かくふわふわした状態で検査ができていました。
冷めると若干硬かった気がします。
以上、もちが試行錯誤の末完成させたバリウム入りの検査食でした。
テスカップを使って簡単にバリウムゼリーを作る
テスカップをご存じの方はいますか?
ニュートリーから出ている商品で、バリウムゼリーを作るキットです。
※yahoo!ショッピングの画像参照
バリウムゼリーのレシピが完成していないとき、テスカップを使用していました。
便利です。
ボトル容器にバリウム、付随のゲル化剤、水を入れて混ぜるだけ。
常温で固まるので冷やす必要がありません。
栄養士じゃなくても作れます。笑
手作りと異なり舌に残るザラザラ感もありませんでした。
VFの頻度が高い病院では重宝する商品でしょう。
ゲル化剤の使用量を調節すると嚥下食ピラミッドのL0~3までのレベルに準拠した物性に調整が可能です。
残念ながら当院では、年間実施数が少なくコストが高くついてしまうので、レシピ完成後はテスカップの使用は中止しました。
バリウムゼリーのレシピをぜひ使ってください
全国各地でVFを実施している病院はたくさんあると思います。
一人職場の栄養士もたくさんいると思います。
そんな栄養士が悩んだときに私のレシピを使えそうであれば使ってほしいです。
それで時間の節約になるなら最高じゃないですか?
使えるものは使っちゃいましょう!
コスト的にも手作りの方が安いですし。
テスカップのように物性のレベル調整までできたレシピではありませんが・・・
うまくいかない時は、みなさんで試行錯誤して下さい。笑
最近依頼がきた検査食の写真です。
これにはバリウムゼリーはありません。笑
ご参考までに。
バリウムゼリーの作成に困っている方は是非一度試してみてください!
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「臨床栄養」臨時増刊号 第125巻4号 管理栄養士のためのリハビリテーション栄養
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